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越物(こしもの)花珠(はまだま)真珠が出来るまで

上質な「越もの」だけを厳選したブローチの真珠

花珠を厳選したブローチのパール真珠ネックレス
BROOCH(ブローチ)は愛媛県・宇和島、三重県・伊勢志摩、長崎県・対馬の三か所の真珠養殖業者と提携しています。それぞれに真珠養殖で実績のある地域でその魅力も異なります。真珠はあこや貝の中で育つ宝石です。生き物が作り出す物なので自然環境の影響を多少なりとも受ける関係で複数の真珠養殖業者との提携関係を作っているのです。
まず初めに真珠養殖の基礎知識としてあこや貝には「当年もの」と呼ばれる4・5月にあこや貝に真珠核を挿核し、年をまたいで1・2月までの9~10か月の養殖期間貝を海の中で育てて浜上げするものと、4・5月に挿核し翌年の12月までの20~21か月(1年半)の養殖期間とる「越もの」とが有るのですが、ブローチで取り扱う真珠は「越もの」だけ、「当年もの」は取り扱いません。
長い養殖期間を取る「越もの」は真珠層がその分厚巻となって耐久性が増すメリットがあります。しかし、真珠層を多く巻くために巻いたムラが出やすく真円で無くなったり、途中で貝が吸い込んだ砂粒や微細な不純物が”えくぼ”や傷と成る事も有ります。また何より長い養殖期間による”あこや貝”が死んでしまうリスクもあり越ものの比率は年々減少しております。(※あこや貝は死んでしまう時に出る分泌物で真珠は使い物にならなくなってしまいます。)その為、ブローチ提携以外の養殖場で見ても真珠生産全体の5~6%ほどしか採れていません、越ものは希少な真珠なのです。ブローチで取り扱う無調色ナチュラルパールは毎年真珠を浜揚げしてその出来を見て組むか組まないかを判断しています。その為、何時もご案内できる品物では無い事も併せてご承知ください。

花珠真珠の養殖場でパールチョーカーは組まれる
今回紹介するのは愛媛県宇和島の真珠養殖場です。黒潮分流が流れ込み、寒流暖流の豊かな海の恵みによって付近でも有数の魚介の名所でもある宇和島、リアス式海岸に覆われたこの地域では独自の地形を生かしてハマチや鯛などの養殖も盛んに行われています。

「生かさぬように殺さぬように」真珠貝のかご詰め作業(抑制作業)

あこや貝は「あこや貝」の母貝(ぼがい)を育てる養殖業者と、その母貝を使って真珠を作る真珠養殖業者とがあります。母貝を育てる養殖業者はあこや貝の稚貝を3年間かけて大人にしていきます。手のひら位のイサイズ(約7センチ)程度まで丁寧に育てていきます。あこや貝は貝殻部分が柔らかくデリケートで育成の難しい貝です。養殖業者は丁寧に稚貝を養成していきます。あこやの稚貝は1年で約4.5センチ、2年で約5.5センチ、3年で約7.5センチに成長し大人の貝になります。元気に成長して大人となったあこや貝は真珠貝と成るべく出荷され真珠養殖業者に納入されます。
真珠貝は稚貝が大きくなるまで育てて出荷する。上質なパールは母なる海の贈り物
基本的に「母貝(ぼがい)養殖業者」は強くて丈夫な真珠貝を作るために努力し、「真珠養殖業者」は美しい上質な真珠を作るために努力します。貝を育てるのが分業なのは採掘・研磨で異なるダイヤモンド業界にも通じる考え方です。分業にする事で個々の作業にスペシャリティが生まれより良い仕上がりとなるのです。

真珠養殖業者は納品された元気なあこや貝を抑制籠(よくせいかご)とよばれる籠の中に出来るだけたくさん詰め込み、海へと戻します。詰め込まれたアコヤ貝はわざと通水性の悪い籠の中に置かれて栄養不足と酸欠になり体力を奪われてだんだんと冬眠(仮死)状態になっていきます。この後行う核入れでは、あこや貝が冬眠(仮死)状態である事が重要なのです。真珠養殖業者がこの抑制の表現を「生かさぬように、殺さぬように」というのですが、そのさじ加減はこれまでに養われた養殖業者の勘と経験で行います。
真珠ネックレスは上質な珠だけを厳選して連組している

挿核作業、(核入れ・玉入れ)

天然真珠ではあこや貝が偶然吸い込んだ砂粒や不純物を自分の真珠膜で覆って偶然できます。その為真珠は人類とのかかわりも深く、古くは貝などを食べていた古代人が偶然見つけ一説には人類が最初に出会った宝石であるとも言われています。
養殖真珠ではこの偶然吸い込む不純物を人工的にあこや貝の体内に入れて真珠膜で巻かせて真珠を作っていきます。ミシシッピィドブ貝という貝の貝殻を削って丸くした核(かく)を人工的に真珠の中心部と見立てて挿入します。この核を注入する作業を挿核や核入れ、玉入れと呼びます。挿核作業は熟練を要する作業で、一人前になるのには数年かかると言われています。

細胞貝(さいぼうがい)というベースとなる美しい真珠層を持つ細胞貝から、外套膜(がいとうまく)”貝のヒモ”部分を切り取ります。下写真、貝の左半分は貝殻の内側が見えていると思いますが、これが真珠層で覆われている部分です。この成分で不純物を巻き込んだものが真珠の珠と成るので、核と一緒に切り取った外套膜を挿入して真珠層で覆う様に誘導するのです。
外套膜の分泌物で貝殻のを形成真珠は真珠層で覆われている
あこや貝一つに対して真珠の元となる丸いどぶ貝の核と切り取った外套膜を1づつ。あこや貝の大きさによっては核と外套膜を2づつ入れる場合もあります。挿核作業は熟練が必要で専門職人が一人が1日に約600~700個の挿核をこなします。
本当の熟練工ともなると1日1,000個以上の挿核をこなす職人も居られます。この時重要なのは抑制され酸欠となったあこや貝が仮死状態である事。仮死状態でないと挿核作業のショックで死んでしまったりします。仮死状態にすることで麻酔の代わりにしているのです。8センチ程度の体に1センチほど大きさの有る核を入れますので、挿核によってあこや貝は大きなダメージを負います。この後、そのダメージを抜く養生作業に入っていきます。

あこや貝を養生してダメージ回復します

稚貝が大人になると8㎝程度まで大きくなる
核挿入のダメージから回復するために先ずは波の少ない湾内で約1ヶ月間養殖されます。黒潮分流の運んでくる豊富な栄養で あこや貝はどんどん元気になっていきます。あこや貝の体内では外套膜が細胞分裂を起こして核の周りを取り囲み、真珠袋(しんじゅぶくろ)を作りだします。異物として挿核された真珠核を真珠袋で包みます。そして袋の内側の核の表面に貝殻の成分である真珠層を積み重ね始めます。
この繰り返して上質で美しい輝きの真珠を生み出すのです。また、この間にせっかく挿核した真珠を異物と勘違いして吐き出してしまう貝もいますので真珠を栄養が豊富な外海へ出して本格的な真珠養殖期間に入る前に一旦浜揚げして真珠が中に入っているか?を確認します。
買に付着した汚れを丁寧に落としていく、愛情込めて花珠真珠を育てる
栄養が豊富な外海へ出されたあこや貝は真珠を取り出す日までここで養殖されます。
一年以上の期間養殖している真珠を越物と呼ぶ
玉出し時期までの間、あこや貝の表面やネットには、ツリガネムシ、ケツボカイメン、カサネカンザシ、サラサフジツボ、ユウレイボヤ、スエヒロクダコケムシ…栄養豊富な海ならではのイロイロが付着します。これらあこや貝の貝殻に付着する海の生物たちは、実はあこや貝にとって有害な生物たちです。
あこや貝はフジツボなどに付着される事で貝殻の開閉の邪魔をされるだけでなく、あこや貝の餌であるプランクトンまで奪い合いになってしまうため、真珠養殖場では定期的に貝殻の掃除をしなければなりません。
養殖業者は2週間に1回程度、高圧洗浄機でそれらの汚れを落とます。付着物が多い場合や取りきれない時は浜揚げして貝殻を磨きます。「貝掃除」は頻繁に行うことであこや貝を綺麗にするだけでなく、貝に直接刺激を与えて真珠層の分泌を促進す効果も有る為、貝掃除は上質な真珠養殖には欠かせない作業なのです

貝掃除で真珠層の分泌を促進、上質な真珠が出来る

越年パールの花珠は希少性が高く、不作の年にはあがらない事も
あこや貝の外側に着いた付着物を直接バフモーターで磨いて落としていきます。ブローチの真珠は「越もの」だけを取り扱います。通常4・5月に挿核して年をまたいで1・2月までの9~10か月の養殖期間貝を海の中で育てて浜上げするのですが、越ものは4・5月に挿核し翌年の12月までの20~21か月(1年半)の養殖期間とりますので、貝掃除の回数も多くなり真珠層の分泌が上がり、より上質な真珠が出来上がるのです。
花珠鑑別では真珠層を0.4ミリ以上巻いている事が条件となります。真珠1層0.2ミクロンの厚さしか無い為に最低でも2,000層は真珠層を巻いて厚巻にしたいのです。

雄大な瀬戸内海の海流で育つあこや貝から真珠を取り出す

「玉だし」いよいよ真珠を取り出します

沖だしから20か月、、、いよいよあこや貝を海から引き上げ、中から真珠を取り出します。玉出しは水温が低い冬の時期に行われます。これは水温が下がることによって、真珠層が引き締まって最後の一巻で真珠に強い光沢と表層のキメの細かさが生まれるからです。花珠と呼ばれる最高品質の真珠になる為には真珠層のキメや美しさはもちろん強い光沢があり輝いていないといけないのです。木の年輪も冬の間に巻いた部分は引き締まっていて強く細かく巻いています。それは真珠も一緒なのです。
しかしただでさえ大きな不純物を体内に入れたままの真珠が冬の低い海水温にさらされる事で死亡率も上がってしまいます。死んでしまったあこや貝からは真珠はもちろん、貝柱もとって食べる事が出来ませんので、長期間しかも冬の養殖は高いリスクと隣り合わせなのです。

あこや貝から取れる真珠を本真珠と呼ぶ
海から引き上げられたあこや貝はネットから出され、まずは生きている貝と死んでいる貝に分けられます。生きている貝は貝柱と真珠、貝殻に分けられます。あこや貝の貝柱は食用になりますのでここで仕訳けて別に出荷されます。貝柱以外の部分には真珠が入っていますので分離機で貝の部分と真珠とを分離し取り出します。あこや貝の貝殻は別に出荷されボタンや螺鈿等の装飾材料となります。中には時計の文字盤に使われる事も在ります。こうしてあこや貝は出来るだけ余すことろなく使われているのです。

無調色ナチュラル花珠品質は入っているか?

玉だし時の平均的な品質を見て無調色ナチュラルにするか?それとも調色するのか?を判断しています。真珠のネックレスは一本当たり少なくとも50粒程度を使いますので、この段階で美しい真珠が取れていないと無調色は断念します。真珠の豊作・不作はこの段階で判断されるわけです。
真珠は色やサイズで大まかに選別されて出荷される
おおよその色別に仕分けされた真珠。最も価値の高い無垢なホワイト系と人気のピンク系、そして生成りクリーム系、グレー系に大別される。この内無調色ナチュラルで通用するものだけ選別されて残りは調色によって色を整えて出荷されます。

剥き落としの花珠は業者間で使われていた業界用語

連組では同じ品質同じ大きさなどをそろえていく
花珠(はなだま)はその昔、真珠養殖業者が使っていた言葉です。養殖業者間でもともと使われていた「花珠」とは、全生産量の中の1%に満たない真円でキズがなく、色、テリ、巻きの優れた最高品質の真珠のことを指していました。本来希少なはずの花珠がどうして多く出回る様に成ったのでしょうか?
たま出しした真珠はそのまま品評会に出品され産地の県知事賞などで評価されます。その際に花珠がどのくらいの割合で入っているか?が真珠の品質の良し悪しの判断材料だったのです。しかし花珠には明確な基準が無かった為に、多くの業者が真珠を高く売るために花珠を勝手に名乗ってしまい業界は大混乱となったことが有ります。これが花珠が多く出回っている理由です。現在は昔の基準では無いですが業界内で花珠の基準を真珠科学研究所中央宝石研究所などの鑑定鑑別機関が定める鑑別基準に照らし合わせて判断できますのでそこまで混乱する事は無くなっています。

品質ごとに最終選別される

真珠もダイヤモンドと同様に品質基準が有りますそれは大きさ(サイズ)、色、形、キズ、テリ(光沢)、巻きの6つの要素です。真珠にはダイヤモンドのような世界共通の品質基準がありません。その為この6項目をアソーターの役割の人間が行い品質ごとに真珠を仕分けします。ブローチの真珠の内、無調色ナチュラルは大記載以外の5項目が最高評価の物だけが選定されます。更にその中にある僅かな違いを見抜いてネックレスの連に仕分けしていきます。真珠の品質7項目の最後は”連想(れんそう)”とあり合う真珠の品質が同じことで経年劣化で起こる真珠の劣化スピードを併せて判り難くするのです。
花珠はなだまは一つ一つルースとして販売される
調色真珠では両穴用や方穴用の選別も有るのですが、無調色ナチュラルではそうした選別は在りません。最高品質の真珠を使って仕上げたネックレスがブローチのS品質なのです。

ブローチのSグレードは非常に希少な無調色ナチュラル花珠を厳選

厳選されたSグレードの真珠で色合わせします。あこや貝の色は実体色と干渉色とで色が作り出されます。そして表面のキメと傷の有り無しでその美しさが良く発揮されるかどうかが決まります。中でも干渉色は光の干渉で生み出される色なので非常に複雑な色合いです。真珠のネックレスは50粒程度必要としますが、その50粒はなんと2万粒程度の中から色合いをそろえて選び出していくのです。
綺麗な花嫁道具の本真珠パールネックレスはブローチ
大きさ、色、形、キズ、テリ(光沢)、巻き厚、連想(れんそう)の7つの要素が最高に整ったSグレードの花珠真珠ネックレスの輝きをお楽しみください。