TEL.025-246-0007
営業時間 11:00 a.m. - 19:30 p.m.
HOME > 社長Tコラム > 近年業界内で問題視されるCVDダイヤモンドレポート

近年業界内で問題視されるCVDダイヤモンドレポート

近年業界内で問題視されるCVDダイヤモンドレポート

更新:2014年02月12日

合成ダイヤモンドの現状について

ダイヤモンドの輝きは数値化できない

ダイヤモンドの鑑定鑑別機関IGIアントワープで2013年5月にニューヨークのディーラーから持ち込まれた1,000個のダイヤモンドの内なんと600が合成ダイヤモンドだったというショッキングなニュースがこの問題が業界内で問題視されるようになった最初でした。
合成ダイヤモンドは今までも市場には稀に存在しており、存在自体は珍しいものではなかったのですが、これだけまとまった数が一度に見つかったのは珍しく今までにない事でした。
その後、中国インドなどのラボ(鑑定鑑別機関・研究所)からも合成ダイヤモンドの報告が相次いで挙がります、中央宝石研究所でもインドで買い付けられた鑑別に持ち込まれたダイヤモンドに中に合成ダイヤモンドが発見されているそうです。

合成ダイヤモンドはルーペ(10倍の率の拡大鏡)や一般的な鑑別資材では看破不能であることが問題で、悪意を持って天然石の中に混ぜて市場流出させた場合には大問題になる事は必至の品物である。

CVDとはChemical Vapor Depositionの略で、化学的に気体状態から積層させる合成法を意味しており、日本語では化学気相成長法や化学蒸着法と呼ばれます。MPCVDと書かれている場合は、Microwave Plasma Chemical Vapor Depositionの略でマイクロ波プラズマ法と呼ばれています。

天然宝石と合成、人造模造石の違い

①天然石 希少性が高く美しい外観を有し永遠性のある固形物、天然鉱物としての無機物結晶を指す天然石の中にはカットと研磨以外の人為的な処理を宝石種毎に天然と認める範囲が有る。
②合成石シンセティックストーン 天然に対応物が有る、化学特性、物質特性、内部構造を有する、元素の種類も並びもすべて同じに人工的に作った宝石。
※合成ダイヤモンドと天然ダイヤモンドは物質としては同じである。
③人造石 天然に対応物が無い人工的に作られた特殊な結晶、天然に無いすぐれた性質を生み出すために作られた物、キュービックジルコニア(キュービック構造のジルコニア)
④模造石 見た目が似ている、代用になるがモノとして全く違うモノ、ホワイトサファイヤ・GGG・YAG・等、イミテーション、ガラスなども含まれる。

合成ダイヤモンド

ダイヤモンドなのか?ダイヤモンドではないのか?を見分ける器具では天然or合成を看破できない。合成ダイヤモンドにはいくつかの作り方が有る。

合成ダイヤモンドは何故作られるのか?

ダイヤモンドの注目点として
① 高い屈折率
② 高硬度
③ 高い熱伝導

格子震動、炭素原子の結びつきが強く振動が隣との結びつきが強く軽いので熱の繋がりが高い、万物の中で最も高い熱伝導を持つ。放熱板や様々な新しい素材の研究に使われている、CVD合成ダイヤモンドの板材は銅よりも高い熱伝導が有り、半導体などの分野で外せない工業用の素材と言える、この分野で工業化が成功すれば様々な技術に転用できることが予想されるため今後も合成ダイヤモンドの研究は進むとみられている。
この他、薬品に対する耐久性が高い事や、紫外線に強い事も注目点として挙がる。

宝飾用ダイヤモンド合成の歴史は古く1955年GE社(ジェネラルエレクトリック社)が合成に成功、この時には2,000℃以上1,000万気圧と言う途方も無い様な高温高圧装置を開発している。85年代には住友電工が工業用のダイヤモンドを発表、93年にチャザムが宝飾用の合成ダイヤモンドを発表、1996年に鑑定鑑別機関に持ちこまれる、2003年CVDダイヤモンドが宝飾用に発表された、2010年ジェメシスがCVDダイヤモンドを発表。

ダイヤモンドの合成は1990年代には高温高圧法HPHT、2000年代に入って化学気相蒸着CVD法が主流となっている。

HPHT合成ダイヤモンド【 High Pressure High Temperature 】高温高圧法

大型単結晶

ダイヤモンドの生成時の状態を人工的に再生してダイヤモンドを作り出す、地下150~200キロの圧力と温度を再現してダイヤモンドを人工的に合成する方法。
※装置の開発が大変、高額となる設備投資の問題が有る。

フロリダのジェメシスやAOTC、などが有名、HPHT合成ダイヤモンド生成装置一個に対してダイヤモンド一個が生成可能。

種結晶を作ってダイヤモンドにとなる炭素を高温高圧状態で積み上げる方式。1B型のダイヤモンドは住友金属などの論文でも結晶の研究も解明されていて温度と圧力の制御も完全に把握できている。
HPHT高温高圧法で合成する場合、完成する合成ダイヤモンドの色は無色と黄色では黄色が圧倒的に多くなる、これは微量であっても発色原因となってしまう窒素の排除が出来ない事が原因している。
因みに無色にするためには発色原因となる窒素を完全に排除する事が必要なのですが、ダイヤモンドが窒素無含有となればダイヤモンドのタイプは2型Aとなり、ごく微量の窒素の侵入を防ぐ事は現在の技術では事実上不可能なため生成が非常に難しい。
この事からも高温高圧法では2型Aは存在しないということが解る。通常天然ダイヤモンドの原石は等軸状8面結晶で天然マグマの中で生成・結晶するが、HPHT合成は超高温高圧下の溶解した金属の中で堆積して結晶する為、出来上がる結晶の形に違いがある、原石の段階で天然か合成かを見分けるのは簡単である。
炭素でできているダイヤモンドはグラファイトと同じ化学組織、炭素Cで出来ている。天然と合成では結晶構造で違いが出る、ダイヤモンドは立体的(三次元配列)、グラファイト(石墨)は層状的。本来立体的に結晶しているはずのダイヤモンドが合成の場合は違う形の結晶形となる。
これを利用してダイヤモンドの成長線の見分ける事が出来れば簡単に看破可能、例としては天然の木を使った将棋盤などは木の杢目を見る事で、本物か偽物かを見破る事が出来るのに似ている。
デビアスグループDTC開発のダイヤモンドの成長線を看破できる機器。ダイヤモンドヴューアーを使うと合成での成長線を見る事が出来るので看破可能である。

CVD合成ダイヤモンド【 Chemical Vapor Deposition 】 化学気相成長法

・多結晶薄膜・大型単結晶

炭素物質を含むメタンガスを高周波でプラズマ化することにより、炭素物質がラジカル化して孤立した原子として反応性に富むようになり、基板上に吸着されて種結晶上に堆積し結晶する。
ガスからダイヤモンドを作る際の温度は1,000度程度1気圧程度までで可能、通常この条件下では炭素結晶はグラファイトしか出来ないのですが、メタンガス(メタンガスは4個炭素を持つ)にマイクロ波を与えると炭素原子が孤立した原子となり、孤立した炭素原子をダイヤモンドの種結晶と結合させる事で結晶化する、ちなみにCVD合成法では一回に同時に50~60個の合成ダイヤモンドを作る事が出来る、水素ガスを入れる事でグラファイトを除去する為、ダイヤモンド以外の不完全部分のみを取り除きながら少しずつしか出来ないダイヤモンドのみを効率よく生成する。
メタンガスの中で生成するので窒素ガスが限りなく入りにくい状態になりクリアなダイヤモンドを作り出すに向いている。1mm位の厚みを結晶させるのに約10時間程度必要らしく、ダイヤモンド1ctは4mm程度の厚さの結晶なので約100時間で完成できる、4日で60個の1ctのダイヤモンドを作り出す事が出来る計算。

・内包物特徴

高温高圧法の場合は合成されたダイヤモンドの内部に金属が内包物として入っていたがCVDの場合は炭素の結晶が入っている。通常高品質の宝飾用CVD合成ダイヤモンドは更にHPHT処理を施し色処理して出荷される場合が多く、拡大検査において特徴的な包有物なども見つかっている。通常純粋で窒素を含まないタイプ2型に属する。(紫外線反応無し、CVD合成のピンクダイヤモンドは紫外線反応が赤になる。)
この原理から考えると赤外線光度計で2型を見極めるのも簡易的にCVD合成ダイヤモンドを排除する方法となる。 さらに進めて2型の天然ダイヤモンドとCVD合成ダイヤモンドを見分けるにはフォトルミネッセンス分光分析検査で・強いレーザー光線で液体窒素を使ってマイナス190度程度までダイヤモンド冷やしレーザーの反射光を検査する方法で看破可能。

ダイヤモンドは炭素でできている、地上界で出来る結晶なので何らかの不完全性が生まれるのが通常で、結晶する際に空気中に最も多く含まれる窒素が内包される(※空気中も80%が窒素)天然のダイヤモンドは99.8%が1型ダイヤモンドに分類される。

FTIR(赤外分光光度計)で計測するとそれぞれのダイヤモンドのタイプによって様々な波形を示す、CVD合成ダイヤモンドのUVルミネッセンス像は特徴的な波形を示す為、容易に看破が可能である。無色透明の2型の場合、フォトルミネッセンス分光分析検査を併用すれば合理的にCVD合成ダイヤモンドを看破する事が出来る。

ダイヤモンドのタイプについて

1型と2型が有り1型は窒素含有タイプ、2型は窒素無含有タイプ。それぞれに大きくAとBの分類が有り大まかに4つのタイプに分類される。

1型A 窒素含有1PPM(1,000,000分の1窒素入れ変わり)100~1000程度
窒素が並んでいると色原因となり難い、全体の99%がこのタイプと言われている。
1型B 窒素含有1~10PPM程度、通常濃い黄色 HPHT合成ダイヤモンド
窒素単独で炭素と入れ替わっている、黄色の色原因となる。
2型A 純粋炭素、着色原因は結晶格子の歪みに生じる色の吸収のみ CVD合成ダイヤモンド
2型B 純粋炭素ホウ素含有、通常青色+格子欠陥の色吸収による残像色が有る。

結論

現在宝飾市場には、高温高圧方、CVD法の各色の合成ダイヤモンドが流通しており、明確な情報開示と簡易な判別方法の確立が強く求められています。

天然と合成ダイヤモンドは物質としては同じものであるが生成環境とその後に受けた履歴が異なる為、この履歴の相違による宝石学的な特徴を日常検査において捉える事が必要となる。鑑定鑑別機関においてはUVルミネッセンス像による観察はとくに重要です。

De Beers Groupから各ダイヤモンド取引の事業所への提案文には
・販売する商品に関して情報開示する
・有効な鑑別装置が利用できる状態を保つ
・信頼できるサプライヤーからのみ購入し必要において商品を検査できる状態を知る
・確実に適正な工場管理が行われるようにする
・購入者に対して保障の提供をする
・積極的な策を講じる事
と明記されている。

弊社ではこれまで通りタイプⅡのダイヤモンドでは有効なUVルミネッセンス等の分光分析検査を受ける事、高感度の光学検査レポートの無いダイヤモンドについては取り扱いをしない事とします。
※BROOCHの店頭にはCVDダイヤモンドについて鑑定鑑別機関で専門的な研修を終了し知識を持って対処できるスタッフが常駐しています。

中央宝石研究所の合成ダイヤモンドセミナー修了 中央宝石研究所の合成ダイヤモンドセミナー修了