第二話:運命の婚約指輪を探して
「こちらのリングはいかがでしょうか?」
まみは、ガラスケースの中からシンプルなソリティアリングを取り出し、たいしに見せた。プラチナの細身のアームが中央のダイヤモンドを引き立てる、クラシックなデザインだ。
「シンプルだけど、ダイヤモンドの存在感が際立ちます。人気のデザインですよ。」
「へぇ……」
たいしは真剣にリングを見つめた。確かに、どんなシーンでも映える洗練されたデザインだ。だが、心のどこかで何かが引っかかる。
「みさきは……どんなデザインが好きなんだろう……?」
口には出さずとも、たいしの中に迷いが生まれた。みさきの好みはナチュラルでシンプルなものが多い。服装も飾りすぎず、上品な雰囲気のものが好きだった。しかし、指輪は一生もの——特別な意味を持つアイテムだ。
「もう少し、他のデザインも見せてもらっていいですか?」
「もちろんです!」
まみは頷きながら、次々と異なるデザインの指輪をケースから取り出した。
「こちらは、センターダイヤモンドの両脇に小さなダイヤモンドをあしらったデザイン。華やかさがありながら、繊細で可憐な印象を与えます。」
「こっちは、アームに流れるようなラインが入ったデザインです。指を長く見せてくれる効果がありますよ。」
たいしは指輪を一つひとつ手に取って見つめた。
「キレイだな……」
「でしょう? みさきさんの雰囲気を考えると、こういった上品なデザインも似合いそうですね。」
たいしはまみの言葉にハッとした。
(そうか……俺は自分の好みで選ぼうとしていたけど、本当に大事なのはみさきに似合うかどうかだ。)
たいしの頭の中に、みさきの笑顔が浮かんだ。彼女がこの指輪を薬指にはめたとき、どんな表情をするだろうか。驚くかな? 喜ぶかな?
「うーん、迷うな……。」
「プロポーズの日まで、まだ時間がありますからね。」まみは優しく微笑んだ。「お相手のことを思い浮かべながら、じっくり選ぶのが一番ですよ。」
たいしは大きく頷いた。
「そうですね。もう少し考えてみます!」
こうして、たいしの指輪選びは始まった。30日後のプロポーズの日まで、彼は最高の一本を見つけるために、悩み、考え、そして——決断する。







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