第七話:プロポーズ当日、想いを伝える瞬間
桜が満開を迎え、春の暖かい風が街を包んでいた。
たいしはスーツに身を包み、胸ポケットに小さなケースを忍ばせながら、そわそわと落ち着かない様子で家を出た。今日は、ついにプロポーズを決行する日だ。
「夜桜、楽しみだね!」
待ち合わせ場所に現れたみさきは、淡いピンクのワンピースを着ていた。その姿を見た瞬間、たいしの心臓は高鳴った。
「うん、ちょうど満開らしいし、きっと綺麗だよ。」
そう言いながら、たいしは手を差し出した。みさきがその手を取ると、指先が少し震えているのがわかった。
「どうしたの? 緊張してる?」
「いや、ちょっとドキドキしてるだけ。」
たいしは照れくさそうに笑った。
二人は桜並木を歩きながら、夜の静けさと幻想的な景色を楽しんだ。提灯の柔らかな光が桜を照らし、風が吹くたびに花びらが舞い落ちる。まるで、二人のために用意された特別な舞台のようだった。
「やっぱり桜って綺麗だね。」
「うん、でももっと綺麗な景色があるよ。」
たいしはそう言って、みさきを展望台へと誘った。
夜景が広がる展望台
展望台に着くと、眼下には街の光が宝石のように輝いていた。夜空には星が瞬き、夜桜と街の光が幻想的な雰囲気を作り出していた。
「わぁ…すごく綺麗。」
みさきは感動した様子で夜景を見つめていた。
「ここに来るの、久しぶりだね。」
「うん、初めて来たときも綺麗だったけど、今日はもっと特別な感じがする。」
たいしは、そっとポケットの中のケースを確かめた。
「みさき。」
「うん?」
たいしは深呼吸し、ゆっくりと膝をついた。みさきは驚いた表情でたいしを見下ろした。
「俺は、みさきと一緒にいる時間が本当に幸せなんだ。楽しいことも、大変なことも、全部二人で乗り越えていきたい。」
たいしはケースを開いた。中には、みさきのために選んだ婚約指輪が輝いていた。
「これからもずっと、一緒に笑って、一緒に過ごしていきたい。俺と結婚してください。」
みさきの瞳には涙が浮かんでいた。震える手で口元を押さえながら、ゆっくりとうなずいた。
「…はい。」
その一言を聞いた瞬間、たいしの緊張は一気に解けた。指輪を取り出し、みさきの左手の薬指にそっとはめる。
「似合ってるよ。」
みさきは涙をぬぐいながら、たいしに微笑んだ。
「ありがとう…すごく綺麗。たいしが選んでくれたんだもん、大切にするね。」
二人は夜桜の下で手を握り合い、静かに幸せをかみしめた。
「これから、よろしくね。」
「うん、よろしく。」
こうして、たいしとみさきの未来へ向けた第一歩が始まったのだった。
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